英語ができても、適切な英文契約書は作れません
海外企業との契約書は、英文で作成されるケースが多い
海外取引というと、ひと昔前には、「大都市所在の大きな企業」にのみ関係するお話で、「地方所在の中小企業」には無縁なお話、と考えていた方もいらっしゃったかもしれません。
しかし、現在では、アジア、欧米、南米などに所在する海外企業と取引を行う、地方所在の中小企業の数はどんどん増加しています。弊所でも、埼玉県所在の企業から「海外企業と取引をするので、契約書をドラフトしてもらいたい」、「海外企業から契約書案が送られてきたので、コメントしてもらいたい」といった、海外取引に関する相談の件数が増えていますし、他の弁護士からそのような相談企業を紹介されることも増えました。
「海外企業との契約書」は、色々な言語で作成されるケースがありますが、一番多いのは、事実上世界の共通言語となっている「英語」で作成されるケースだと思います。
英語ができれば、海外取引に用いる英文契約書を作れる、という致命的な誤解
筆者が、しばしば気になるのが、「英語」ができることをもって、海外取引に用いる「英文契約書」の作成業務をできると勘違いしている弁護士が、結構いるように思われることです。
海外企業との間で締結する契約書の作成業務は、言語が何であれ、海外取引法務に関する知識・経験がなければできません。
そのため、日本国内の取引法務しか知識・経験のない弁護士(=海外取引法務を理解していない、日本法のみを念頭において物事を考える弁護士)が、「英語を読んだり書いたりできるから、海外取引用の英文契約書の作成もできます」と宣伝することは、「大きな間違い」です。
貴社がそのような弁護士(=英語ができますと宣伝して、日本法の頭のみで海外取引を考える弁護士)に業務を依頼して、大怪我をするのは、避けなければなりません。
海外取引法務を理解している弁護士とは?
では、貴社が、海外企業との契約書の作成を依頼できる「海外取引法務を理解している弁護士」とは、具体的に、どういう弁護士でしょうか?
結論は、
- 企業間の国内取引法務について知識・経験を有していることを大前提として、
- 国内取引と、海外取引の違い(どのような点で、国内取引に比べて特殊なのか)を理解しており、
- 海外取引における契約書でしばしばその基本的な考え方が使われることがあるため、英米法に関する基本的な事項を理解しており、
- 実際に何十件、何百件と、企業の海外取引に関する相談・依頼を受けて経験を積んでいる弁護士
だと思います。その上で、海外取引では、条約や海外の法律・判例、慣習が大いに関係しますし、そういったものを弁護士1人でカバーすることは、現実的ではないため、弁護士自身の能力・経験ではないですが、上記1~4に加えて、
- 海外弁護士などとの協力関係
も必要になると思います。
ここまで読んでいただくと、「あれ、英語は?」、「言語は?」と思われるかもしれません。言語(英語)は、事実上「4」に包含されるのだと思います。
如何でしょう?「英語ができるから、海外取引に用いる英文契約書の作成業務ができます」という宣伝が、見当違いであることをご理解頂けたでしょうか?
なお、筆者の経験上、上記1~4を備えることなく、「英語ができるから、海外取引に用いる英文契約書の作成業務ができる」と謳っている弁護士は、実は、英語もできていないことが多そうです。
契約書で使う文言(英語)は、日常会話の英語とは、当然ですが違います。例えば、「損害賠償」という文言は、”damage”と”damages”のいずれを使うことが通常でしょうか?また、海外取引で用いる英文の売買契約書において、”indemnification”や”indemnify”という文言が使われているとき、どう訳しますか?損害賠償ですか?
恐らく、英語ができるだけで、海外企業との英文契約書の作成業務ができると勘違いしている弁護士に聞いても、即答できないように予想します。
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この記事に関連して、「貴社の顧問弁護士、海外案件に対応できますか?」という記事も用意しています。併せて参照下さい。
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